きのうタイカレーを作っていた。ココナッツミルクは吹きこぼれることを忘れていて、見事に吹きこぼれた。あーあ、と泣きそうになっていると娘がやってきて頭をなでてくれた。腕の日焼けをすりすりして「日焼け、かっこいいね」なんてなぐさめてくれるから、もっと泣きそうになった。
ロードバイクに乗っているときに上から車体を見ると、ブレーキシューが左右からタイヤのホイールを挟みこむことでブレーキがかかるのがわかる。ロードバイクは常に微調整が必要で、ブレーキを握りこんでいないのにブレーキシューがタイヤに当たってタイヤが回りにくくなることがよく起こる。シューシューと摩擦音がする。走行は中止。
今の自分の状態はこんな感じ。摩擦を感じながら呼吸をしている。寝転ぶとその摩擦が少なくなる。いつこの感じは消えるのだろう。時間に委ねるしかないと思っていた。そう思えるときと、思えないときがある。
「そんな言葉を見せられたって、どうしようもないじゃないか」今日の私はそう繰り返している。相手が自分に知らずに甘えているのだとしよう。自分だって無防備に甘えてきたという自覚がある。
自ら海底に落としたアンカー。そのロープを切ってしまえばいいのだろうか。おもりの存在を感じながら、凌いでいくしかない。そこを受け入れられない。削られる感覚は、紙で指を切ったときのよう。自分にしかわからない。微細な傷だから感じてやりたいとも思う。ロープを切り、アンカーの存在すら忘れ、冷たい水流に揉まれて目を瞑ってしまいたい。