日常 - 記憶

映画と思ったこと

「ライダーズ・オブ・ジャスティス」というデンマーク映画を長女に薦められて夕べ見た。

さいこーだった・・・

優しくて、可愛くて、大好きな「フル・モンティ」を思い出した。

電車事故でお母さんを亡くした高校生の女の子が、付箋にその瞬間までの出来事を書き出して壁に貼っている。自転車が盗まれなかったら、車が故障しなかったら、お父さんからの電話がかかってこなかったら、電車に乗り遅れなかったら、あの日あの瞬間電車に乗っていなかったのではないか。

それをみた数学者のおじさんが言う。流れは変えられない。付箋の1枚を剥がしても別の要素が関わってくる。原因を突き詰めたいと思うだろうけどそれは無駄なんだ、と。

ああわたしもこうして付箋をペタペタ貼っていたんだろうな。そして、この1枚を抜いたら、って出会いの日の言葉まで遡っていた。記憶を凍結したいと思ったのは忘れることが心底怖かったからなんだ。固めればしがみついていられると思っているんだな。

それぞれにとても苦しい過去を持っているおじさんたち。素敵な社会不適合者。そのやりとりが可愛くて笑った。「弱いから集まってるんだ」って淡々と言う台詞が、やけにかっこ良かった。

北欧は冬季うつ病が生まれた地域だし、オープンダイアローグのような精神療法の生まれた地でもあるし、辛い人たちへの眼差しが温かいし、小説「ミレニアム」「特捜部Q」にも、映画にもドラマにも貧困や犯罪や移民問題がクローズアップされる。いつか行こうと思う。北欧。そう思ったとき、私はいま夢中になるものを見つけつつあるなぁと、内側が温かくなった。

あと。正確な台詞ではないけれど「喪失に直面したときに研究者はそれを分析し、軍人は暴力によってその気持ちを消化しようとする」といったものがあった。「パン屋は?」「知らない」なんていうオチがあるんだけど、ああ私は確かに読んだり書いたりしてたな、必死で・・と思った。読んだり書いたりは、仕事であればなんらかの成果として結実するけれど、自分の喪失に使うと、自分を批判することになったりするなぁと。

映画でも、ひとが表したものでも、感動したときにはそれを自分を解放する力にしようと思った。間違っても、さらに考えすぎて自分を追い込む材料にしないように。

4 Comments on “映画と思ったこと

  1. 映画やドラマや本(漫画含む)に興味がない人って
    小声だけど 人を理解する力が貧困になる って思ってて
    自分だけの小さな時間軸や 物事を知る ということにおいて
    こういうことってものすごく重要なんだと私は思ってる。

    それらに出てくる誰かに共感したり、教えてもらったり
    発見したり、気がついたり。
    そういうことで人生って変わるんだと思ってる。

    私も時間ができたら観てみるね。
    フル・モンティもまだ観ていないので、いつか。

    こうだったら、こうじゃなかったら
    こうしておけば、あんなことをしなければ
    いくらでもある。
    けれども出来ることは その後にどう行動できるか でしかなくて
    映画のように誰かの死が関わっている時はそうは言い切れないけれど
    そうじゃない時には 自分の行動や考え方次第で復活戦もある って
    私自身は思ってる。
    きのこの友人ともこっちにくる前に完全に修復してきた。
    その話はまた追々。

    「弱いから集まってるんだ」
    こういうセリフや言葉ってスキ。私もその仲間だと思うし
    そう言えることが一周まわってもう既に強いと思う。

    1. umiさん

      ありがとう。うん、いつかこの映画のこと思い出したら観てみて。フル・モンティもいいよ。現実に落とし込むと「こういう群れる人たちっているよね」っていう嫌さも出てくるけど、知らない国の人達が集っているのはファンタジックに観ることが出来る。

      そっか、きのこさんともその後、またあったんだね。また聞かせて。

      あるマネー系の編集者が「小説や映画は一切観ない。人の妄想に付き合う時間が惜しい」って言ってたらしい。
      たぶん、その人はある種の葛藤を避けてきたか、汚いもの、というふうに観ているのかも。
      それもまあありなんだろうけど。

      今日、妄想をしていたよ。
      高速バスでumiさんの町に行って、私はDIYとかまったくできないので食事係をするの。八百屋さんとかで食材を買ってきて、汗かいて帰ってきたふたりにごはんをふるまう。

      想像だけで、この世に戻って、両脚が地面に着いた気がした。

      だから妄想は大事!

  2. あるマネー系の編集者が「小説や映画は一切観ない。人の妄想に付き合う時間が惜しい」って言ってたらしい。

    うんうん、それも分かる気もするんだよね。
    でもね、 他人の気持ちが分からない人 って結構多いなって思ってて
    そういう人はきっと違うところで時間をロスしていると思う。
    もしくは誰かを不用意に傷付けていたりとか、気持ちが分からなかったりとか。

    小説でも映画でも 妄想 と捉えるか、その人の考えて感じてきた芯の部分 と捉えるかによって、全然重さが違うよね。まぁ、それぞれでいいんだけども。

    翠雨さんの妄想、私も全く同じこと考えたよ。
    あんまりにもおんなじで、笑った。

    1. そっか、おなじ妄想だったか。なんかもう、体験した気分になってるよ。想像して、いつでもできる、って思うだけで大丈夫なこともあるよね。人生は一度きりだから思ったら経験しなきゃ、ていう考えもあるけども、妄想も一定の力がある。

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