記憶 - 読んだ本

それ以上の意味を脳内で生成するのをやめる

「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ 河出書房新社編

こだまさん、磯野真穂さん、小林エリコさん、齋藤環先生など外さない人選のアンソロジー。読むたびに感想は違いそうだけど一読して良いなと思ったのは、漫画家・はるな檸檬さんの「死にたいあなたが楽になるために」だった。

言い古されたブッダの「いまこの瞬間のことだけ考える」の話が書かれていて、表現の仕方がちょうどよかった。

「苦しい時ってさ、大体過去のこととか未来のことを考えてるでしょ。それをね、「今この瞬間のことだけ考える」に変えるの。今、息してるよね。これ読んでるから、座ってるかな。寝転がってるかもしれないね。そのくらいでしょ、今の自分って。あ、もしかしたら隣の部屋から怒鳴り声とか聞こえてる? そしたらそれをね、「音」とだけ認識するの。空気が震えて、鼓膜が反応して、音と認識した。以上。それ以上の意味を脳内で生成するのをやめるの。そうするとね、今の自分って、ただ息してんだよね。それをひたすら実況中継するの。「息を吸いました、吐きました」って。他のことを考えそうになったら、「雑念、雑念」と思って追い出す。それをひたすら繰り返す。超難しいよ。でも必ず落ち着いてくる」

はるな檸檬さんは20代のとき、天井の梁に釘を打ってロープをかけて、いつでも死ねることにしていると、心が落ち着いていたそうだ。

こだまさんの「打ち明けられないあなたへ」は痛みを感じた。こだまさんが家庭教師をしたK君の話。背中いっぱいに痣が広がっているのを見せたけれど、詳細は「言いたくない」というK君。K君はこだまさんに会えてよかったな。

怖いものは、終わってもずっと残る。怖いものを見た、味わった自分を通して物事を見るから、小さな違和感を大きく拾い上げて追体験する。仕方ないと思っている。そのうち、諦めてしまったほうが楽、になる。両手に力が入らなくなる。
かつて私は電車で痴漢に遭ったとき、「嫌」と思う前に「なんで私?よほど他の人がいなかったのかな」と疑問に思った。今も好意を表されると理由を考える。利用価値があるからなのか、だって自分がひとりの人間として扱われるわけがないと思ってる。
それはそれで。この思考が根底にあることを知っておくとして。「それ以上の意味を脳内で生成する」のを止めるために、内側に入ってみる。思念を剥いだ内側にほのかに熱いものが揺れている。逃げっぱなしでも、揺れるそのものがあることがわかっていればいい。

3 Comments on “それ以上の意味を脳内で生成するのをやめる

  1. ああ、この考え方はわかるなぁ〜って思いながら読みました。
    こういう時って、剝がそう剥がそうとしても
    嫌な考えが纏わりついてくる。
    でもそれを承知で剥がそうとするしかない。
    大丈夫な時には出来そうなことも
    そうなってる時には意外と出来ないんだよね。

    でも読んでみたいなと思う本。

    自分が経験してきた事を活かす(あくまでも自分に)ことをしないと
    本当に損だなーと思うくらいに辛かったヘビーな何年かがあったので
    絶対に回収してやろうと思ってる。

    それには手放したものだってある。
    その中には自分の真ん中にあったはずのもの だってあるはずで。

    変わりたくない事を無理に変える必要はないけれど
    変わることや変えようとしていることを今の私は良いと思ってる。
    手を放す 軽くなる 満ちていく って藤井風さんの「満ちていく」って曲で謳ってるけど
    これは本当にその通りと思って、あの若さでここにいるってスゴいなと思いながら
    ここんとこは日々日々この曲で浄化してる。

  2. umiさん

    読んでくれてありがとう。

    最近ねぇ、ゆるい安定をしていて全体的に明るいよ。だから、少し振り返ったり、触ったりしながら着実に力をつけていっていると思う。
    好きなものが寄り添ってくれるよね。うーんと好きを大事にしていきたいね。

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