大阪出張、最後の取材相手は占い師さんだった。
白髪頭の占い師になりたい、と50歳のときに占いを本格的に学び始めた人。
動画の撮影場所が宿泊先のホテルのそばだったので、朝の取材のあと、少しホテルに戻ってお弁当を食べ、仕事の連絡をあれこれしたりして体を冷やして、再び灼熱の大阪の街に出る。
レンタルスペースはありがちな古いマンションの一室で、猛暑のなか、なおさらエアコンがきいていなかった。
元気な声でRさんが入ってきた。「暑いなぁ~ここ!」と汗を拭く。
立ち会いで来ていた若き男性社員さんが「すみません、ホテルで名刺を忘れてしまって」というと、「○○くん、メールのやりとりではええ子やと思ってたけどそんな子やったんやな!」と最初からぶちかましていて笑ってしまう。
撮影シーン用に私も四柱推命と手相で占っていただいた。
左手に虫眼鏡、右手にお箸みたいなのを持つRさん。
占いを対面で受けるのははじめてだと言うと
「そりゃそうでしょうね。自己完結してる変人だから。
多くの人はどこかに欠けているものがありそこを誰かに補ってもらおうとするけどあなたはそれがないから人に頼らない」と言われる。むむむ……
「よく、無料で占って練習する、という人がいるけど、私は無料でやる占いは自分の練習にはなるけどお客さんのためにはあまりならないと思っています。無料だと、情報は右から左へと抜けていく。でも、お金を払うと元を取らないとと思って、お客さんはなんか行動すると思うんです」
占いではいっぱい情報を伝えるけど、一つだけ覚えて帰ってや、という。
一つだけでも行動を変えたら生きる道筋が変わっていく。
取材が終了したあと二人でご飯を食べにいくことに。
「私好き嫌いないんで、お任せします」と言われ、
焼き鳥やサラダ、どて煮、揚げ出し豆腐など、
私は自分の食べたいものばっかりスマホで注文する。
さっき占ってくれた続きを話してくれる。
全体的に、あきらめてきたことが多い。
とにかく小さい頃から優しくて情が深いから、本当は介護職とかをやっている人なんだけどそれをやったら辛くなっていたんじゃないか。
あなたは太陽だからみんなが光に当たりたがって寄ってきて、ケンカしてる。でもあなたはひとりで完結している変人だから、あんまり気にしてへんけどね。
太陽は気を付けないとその光で相手を焼き尽くすことがあるからね。
でもね、不安があるね。心配症なところ。
芸術線が濃くて長いから、好きなものを書いていくといい。絵本とかね。
数年前に苦しい時期があった、と話すと、
「でもその時期がなかったらあなたは壊れていたでしょう~」と歌うような声で言われた。
壊れないための試練、というものもあるんだな。
Rさんは占い師になるだけあって、悲喜こもごもの出来事を見聞きしている。
だからどんな話をしても「それはあるでしょうね」と、その出来事を触りもせず批判もせず、ともに流れそのものを観察するように見る。
話すたび「ネタ持ってますやーん」って頷いてくれる。
「私ね、よく人に『後ろ振り向いて』って言うんです。
お母さんがやりたいこと見つけたって喜んでても、家族はどう? 取り残されてない?みんな着いてきてるか確認せんと、どっかでうまくいかなくなるから」
アヒルの群れを想像した。
前に進もうとしている人に「後ろ振り向いて」っていうのは水を差すみたいで歓迎されないだろう。だけどこの人にこの関西弁で言われたら、そうだよなって思えてしまう。
東京で働いていると、平らに薄味に均されて、濃い味の人に出会うとびっくりして抵抗感を感じたりする。でも、平らなだけだとつまらないな。人間くさい関西のおばちゃん、Rさんは、わしわしたくましくやってる。なんでもネタになるでーって。
自己完結かぁ
なるほどなるほど
「後ろ振り向いて」っていう言葉。
確かに。
でも「後ろ も時々 振り向いて」って言ったら
伝わり方はもう少し違うんじゃないかな。
最近はこういう 細かいところ に少し敏感。
でも私のこの敏感が故のせいで
相手にダイレクトに伝わらないこともあるかもな
とか思ってて、そう思うとおばちゃんくらいがいいのかも
とも思う今日この頃。
占いは昔は本当に好きだったし、興味もあって。
でもここんとこ最近はもう なるようにしかならんでしょ って
思うようになってきて、どう転ぶのも自分次第って思ったり。
なかなか鋭いことが見えたようだね、おばちゃん占い師。
どう思った?笑
umiさん
読んでくれてありがとう。
そうだね、その場とそのときのテーマと、相手の状況とエネルギー次第で表現は要微調整だよね。
私は今は幸いにして差し迫ったものがないタイミングだったので、遠くから眺めるように聞くことができた。
占いは自分にはできない仕事だなとも思った。
そんなふうに相手の言っていることのアウトラインを見てみると、
ひとつ心に残ったのは、太陽っていうこと。
たとえばむーとこぐまが私の取り合いをしているのは
単に自分が太陽だからしゃーないな、って思うと
罪悪感とか、こうしなきゃいけないんじゃ、って考えなくていいって思えたことかな!
その占い師さんは私と飲むことで自分の占いの答え合わせを、
私は、その人が初対面の人になにを表現するかの観察を、というふうな面白い現場だったよ。
むーとこぐまは翠雨さんの取り合いをしてるのね!笑
ふふふ、そりゃー面白い!
第三者目線でごめんね。笑
占い師のおばちゃん、意外と意外なこと言ってて
でもそれはなかなか深い核心を突いていてすごいな。
私は 陽 に見えて意外と 陰 ですよ
とか言われたら面白いなぁとか思った。笑
自分を俯瞰出来る時に見てもらえるのはいいね。
私もそうかなぁ〜って思う。
なるほど納得!
umiさん
ありがと、そうそう。面白がっておけばええんやって思えたよー
そういえばさっき自分がけっこう言い過ぎちゃったなって反省していた座談会の音声起こしをしていたんだけど
第三者目線で聞いてみると、冷静かつわりと場の話題のバランスをとる意味でもちゃんとした発言に聞こえて
勝手に自分が大げさに捉えて反省していたんだなって思った。
自分のことに関しては、なんでもかんでも大きめに反省しちゃいがちだから
俯瞰して眺め直すと立て直せるもんだなって。
うまれもった立ち位置がそうだからしゃーないってどっかで思うと、
さっとあきらめることができることも、ある。
自分だけの責任にしなくていいし、その人の課題だと思えばいいし。
って、書いてみるとふだんからわかっていることのはずなんだけど
奥にいる自分がどこかで納得できていないと、腑に落ちていなかったりするんだね。
腑に落ちるひとつのきっかけにしていけばいいんだろうね。